小さい”つ”が消えた日(三修社)をぜひ子どもたちと
いじめについて、ニュースが多いですね。私はいじめられたこともなければ、いじめた記憶も持っていない人間ですが、ニュースやネットで状況を耳にする「いじめ」なるものはいずれも「いじめ」と言うよりは「犯罪」として扱うレベルではないか、と思います。
日頃、くだらない言葉狩りをしているマスコミも、なぜか、「いじめ」や「万引き」を「暴行」や「窃盗」等々の適切な言葉に改めようとしない状況。彼らはそう言い換えられないほどに、自身や身内、業界が脛に傷を持っているのかと勘ぐってしまいたくなりますね。まあ下衆の勘ぐりでしょうが。
さてさて、ここからが本題です。
「この世に必要じゃない人なんかいないんだ!」ということをフンワリと伝えてくれる読み物
「小さい”つ”が消えた日」の簡単なレビュー。
舞台は五十音村。そこには、いばりんぼうで自慢してばかりの「あ」さん、優柔不断な「か」さんを初め、言葉の妖精さんたちが済んでいます。
その中で、発音できないがゆえに「一番偉くない」「いてもいなくても一緒」の存在だとみんなから馬鹿にされてしまった小さい「つ」さん。
悲しくなって家出してしまいます。
さあ、小さい「つ」さんがいないために、日本語は大混乱。
五十音村のみんなも、バカにしてきた小さい「つ」さんの価値に気づきます。
一方、小さい「つ」さん自身も、声が出ないのは自分だけではないことに気づきます。お星様だってお月様だってお日様や虹だって声が出ないのです。言葉を話せないことで自分の価値をおとしめることなんてないんだ!
いじめる立場にとっても、いじめられる立場にとっても
簡単に他者を見下したり、自分を卑下したりしてはいけないことがやんわりと、やさしく伝わる本です。
ぜひ先生や保護者が、子どもと一緒に読み聞かせてあげてほしいな、と思います。
なんと作者は日本語を学んでいるドイツ人!でも、気軽に読めるから大丈夫。
文 ステファン・フォン・ロー
絵 トルステン・クロケンブリンク
日本語監修 小林多恵/岩田明子
発行 株式会社三修社
(2006年に新風舎から刊行。加筆復刻したもの)
B6変形 128ページ 2色
定価: 1,470円(本体:1,400円+税)
ISBN: 978-4-384-05514-6 C0097
私が持っているのは2008年11月20日第1刷
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